私たちは、眠っているときに、なぜ夢をみるのでしょう。

夢をみているとき、私たちの脳の中で、いったい何がおこっているのでしょう。

夢について、眠りのメカニズムといっしょにみていきましょう。

二つの眠りのタイプーREM睡眠とnon REM睡眠ー

眠りには、身体を休めるREM睡眠と脳を休めるnon REM睡眠の二つがあります。
この2つのタイプの睡眠が一晩の間に繰り返し訪れます。

眠りについてはじめに現れるのが、浅いnon REM睡眠です。
そして、時間とともに眠りは段々と深くなり、深い睡眠状態がしばらく続きます。

その後、再び浅いnon REM睡眠となり、REM睡眠へと移ります。

この、最初のREM睡眠が現れるまでの時間は深い睡眠の量によって左右され、30歳の平均でおよそ90分です。

身体を休めるREM睡眠

REM睡眠のとき外部からの感覚は遮断され、脳は浅い眠りに近い状態になっています。

この時、左右に眼球がすばやく動く急速眼球運動 (rapid eye movement)がみられることからREM睡眠と呼ばれています。

REM睡眠中も脳の中の一部は、覚醒しているときと同じように活動しています。
REM睡眠は、眠っていても外敵から本能的に身を守れるように脳を覚醒した状態のままにしておくという変温動物のころから発達させてきた原始的な眠りなのでです。

このとき活動している脳の部位が、記憶や学習に関係している扁桃体と海馬です。
実際に脳はREM睡眠中に情報の整理や統合を行い、宣言的記憶の定着をしているといわれています。

ちなみに、宣言的記憶とは、意味記憶とエピソード記憶のことを指します。
意味記憶は、物事の意味を表わす一般的な知識・情報についての記憶です。

REM睡眠は、浅い眠りのようですが、外部からの感覚情報も遮断されているので、周囲で物音がしたり、外部から刺激されたりしても、なかなか目は覚めません。

一晩の間にREM睡眠とnon REM睡眠を3~5回繰り返していますが、起きる時間が近づくにつれ、non REM 睡眠よりもREM睡眠の時間は長くなります。
それに伴い深部体温も上昇して、目覚めの準備に入るのです。

脳を休めるnon REM睡眠

non REM睡眠は、脳を休めるための睡眠です。

REM睡眠中のように急速な眼球運動がみられないことからnon REM (non rapid eye movement)睡眠と呼ばれています。

non REM睡眠の間は、大脳皮質の神経細胞の活動は低下し、だんだんと同期して活動するようになります。
眠りが深いほど神経細胞の活動はゆっくりと同期して起こるようになり、脳全体の血流も低下します。

つまり、non REM睡眠中に知覚、随意運動(意図的に行う運動)、思考、推測、記憶などを司る大脳皮質や身体を活発に動かすための交感神経などを休ませているのです。

この間は身体の筋肉の緊張は低下し、知識として記憶を定着させ、ストレスを取り除いているとされています。

また、non REM睡眠中に脳は宣言的記憶を定着させるだけではなく、手続き記憶を定着させたり、さらには嫌な記憶を忘れさせてくれたりする働きもあります。
ちなみに、手続き記憶とは、自転車の乗り方や習字、スポーツなど身体で覚えるような記憶のことです。

深部体温は低下し、脳を冷却させるために身体から熱が放散され、寝汗をかくのが特徴です。

non REM睡眠は、4つの段階に分けられます。

段階1: 声をかければ目を覚ますくらいの浅い眠りです。

段階2: 耳から入る情報はキャッチできる程度に眠っている状態です。

段階34: 徐波睡眠や深睡眠期と呼ばれ、身体も脳も休んでいる状態です。多少の物音では目が覚めません。

覚醒状態に近いnon REM睡眠のときに目覚ましをかけたり、起こされたりするとスムーズな目覚めとなるようです。

一口で夢といっても、実は大きく2つの種類に分けられます。

深い睡眠中にみる夢

ひとつは、深い睡眠中に見る夢です。

これは、漠然として、しばしば感情的で、ナンセンスなものです。
このような夢は、すぐに忘れてしまうことが多いそうです。

そのとき脳は、記憶を蓄えるために静かに情報処理を行っています。

REM睡眠中にみる夢

もうひとつは、REM睡眠中にみる夢です。

これは、鮮明で強烈な物語性のある仮想現実としての夢です。
そして、夢をみながら「あぁ~、これは夢なんだ」というふうにわかることもあります。

これは、少し目覚めて前頭葉が活性化してきた証拠です。

悪夢

悪夢は大人よりも子どものほうがみるといわれています。
悪夢を見るピークは610歳。年を重ねるごとに悪夢をみなくなるようですが、人によっては生涯にわたって悪夢が続くこともあります。
親を悩ますほどの悪夢は、3~5歳児の10~50%にものぼるそうです。

成人でも、時々悪夢を見る人が5~8割もいて、一般人口の2~8%が悪夢による問題を抱えているともいわれています。
子どもの時は、男女とも悪夢を見る頻度は変わらないようで<すが、成人になると女性の方が悪夢を訴えることが多いそうです。

ちなみに、悪夢の原因は、性格、心の傷、精神疾患、薬、お酒などです。
敏感な人や寛大な人、芸術的あるいは創造的な人が見やすいそうです。

悪夢をきたす薬としては、βブロッカー、抗パーキンソン病薬(シンメトレル、ドミン、ドプス)、抗アレルギー薬(アレジオン、トリルダン)、抗うつ薬(アナフラニール、ルジオミール、セディール)、その他(ドルミカム、レペタン)などがあります。

「夢遊病」と「金縛り」

その他に、睡眠中に起こる変わった現象として「夢遊病」や「金縛り」があります。
「夢遊病」は、深い睡眠中におきます。
ふつう眠っているときは、脳の運動系の仕組みは抑制されています。
つまりは、動けない状態になっているわけです。

夢遊病のときは、その抑制が解除されてしまったにもかかわらず、ほかの睡眠のしくみが続いているのです。

つまりは、眠っているのに動ける状態にあるということです。

それとは、逆の現象が「金縛り」です。
運動をする機能が抑制されたままなのに、眠りから覚めたときにおきます。

ただ、未だにどうして「夢遊病」や「金縛り」の現象が起きるのかまでは、わかっていないようです。

まとめ

人はなぜ夢みるのでしょう。
その本当の答えは、まだわかっていません。
ただ、睡眠の働きとそのメカニズムと夢の特性を知ることで、見えてくるものがあるかもしれません。

 

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