ずっと考えているのにいいアイデアが思いつかない、もうそこまで出かかっている気がするのにいい案がなかなか思いつかない、そういう経験をした人もいるのではないでしょうか?
そういう時には、いったん思い切って考えるのをやめてみるというのも一つの手です。
そして、ある工夫をすると「ひらめき」がもたらされるかもしれません。

創造的アイデアを生み出されるしくみと生み出すためのステップについて、まとめてみました。

創造的アイデアを出すための4つのステップ

何か考えに行き詰った時、それを思いっきり手放す、つまりその問題について考えるのをやめるということが重要になってきます。
アメリカの心理学者 Wallasによると、創造的なアイデアを出すためには王道があるそうです。
それが次に示す4つのステップになります。

1) 準備期(Preparation):問題意識を持つこと
解決したい課題について、あらゆる面から検討し、必要な情報収集を行い、意欲的に課題解決に集中する時期
徹底的に行う事で、次からのプロセスの効果が大きくなる

2) 孵化期(Incubation):その問題について考えるのをやめる
準備期に集めた知識・情報が頭の中であたためられ、無意識の知的活動によってアイデアの発酵が行われる

3) 啓示期(Illumination):あるとき突然、独創的な解決法が思いつく
無意識的思考の関与が大きく、夢などからヒントが与えられることも多い
直感がひらめくことで、予測しなかった思いがけない有効なアイデアが出現する

4) 実証期(Verification):ひらめいたアイデアを検証する
そのアイデアが本当にそれでいいのか、実際に有効なものとして通用するのかを課題にあてはめて、冷静に論理的に検証する

とうぜん、良いひらめきを得るためには、その下準備としての経験や知識のストックは必要でしょう。
ただ、その次の段階として、新たな発想を得るためにそのことについて考えるのをやめるというプロセスが必要になってきます。
というのも、自分たちが意識して頭で考えて出てくるものというのは、今までの常識などにとらわれていることが多いのです。

そうはいっても、重要な問題であることほど、考えるのをやめるという事は難しいものです。
充分な睡眠をとるなど、今までの自分がしてきた準備や無意識での活動を信頼して休息をとることが意外な発想を生むためには必要なのかもしれません。

 創造的アイデアに関係する脳の機能とは

ワーキングメモリー

ワーキングメモリーは、「ちょっとだけ覚えておく」記憶のことで、「脳のメモ帳」とも呼ばれ、私たちが日常生活を送る上で大切な働きをしています。

ワーキングメモリーが低下すると本人としては記憶力が低下したと感じることが多いのですが、実際には記憶力の低下ではなく、注意力散漫になり、あれこれやっても頭に入ってこない状態です。

そして、このワーキングメモリーは、『過剰負荷環境』で低下します。
つまり、やることが多すぎて、いろいろな情報に触れすぎると低下するということです。

クリエイティブなアイデアを出すには、この『ワーキングメモリー(作業記憶)』を鍛えた方がいいといわれています。

テキサス大学の心理学者のアート・マークマン博士がチェロ奏者に対して行った実験です。
即興で演奏するという創造的な能力とワーキングメモリーの関係について調べています。
最初に、全ての被験者のワーキングメモリーの容量を測定します。
それから、あるテーマ(春や冬など)に沿って、被験者に3分間の即興の演奏を三回してもらいました。
即興の演奏はスタジオで録音され、プロの音楽家にオリジナリティーや創造性の評価をしてもらいました。

結果はというと、初回の演奏の創造性に関しては、ワーキングメモリーの容量との間に関係性は認められず、違いがありませんでした。
ところが、ワーキングメモリーの容量の大きな人の演奏は、回を重ねるごとにだんだんとすばらしいものになっていきました。

いっぽう、ワーキングメモリーの容量の小さい人の演奏はというと、だんだんとひどくなってしまったのです。

ワーキングメモリーの容量の違いによって、回を重ねるごとにすばらしくなっていくのか、それとも逆にひどくなっていくのかが変わってしまったのです。

人は何か新しいアイデアを考えようとするときには、だいたいいつも似たようなものから考え始めるとされています。
ワーキングメモリーの容量の小さい人が同じような考えから離れられないのに対し、
ワーキングメモリーの容量が大きい人は広い視野で見ることができるのです。

デフォルト・モード・ネットワーク

ちょっと信じられないかもしれませんが、実は『仕事ができる人ほどダラダラしている』という説もあります。
どちらかというとテキパキと多くの仕事をこなしている人の方が仕事ができるイメージがあるかと思います。
しかし、どうも、脳を十分に働かせるためには、長い間ぼーっと何もせずにダラダラしていることも必要なようです。

アンドリュー・スマートは、著書『できる人はダラダラ上手』の中で、何もせずに無為に過ごすことの効用と、効率重視の生き方、働きからの不健康さについて述べています。

私たちの脳は、ぼーっとしている間も実はしっかりと働いています。
以前は、本を読んだり、話をしたりといった意識的な活動をしているときにだけ脳が働いているのではないかと考えられていました。しかし、2001年に、安静状態の時にしか働けない機能というものがあり、重要な働きをしていることが分かってきました。

これが脳の『デフォルトモードネットワーク』と呼ばれるものです。
ボーっとしている時に脳の機能を調べるfMRIを撮ると「デフォルトモードネットワーク」が活性化し、ネットワーク内の血流が増加します。
それによって、より多くの酸素が運ばれ、ブドウ糖の消費が増え、代謝活動が盛んになります。
そして、脳のいろいろな領域の活動が連携し始めるのです。

このデフォルトモードネットワークは、内省に関係していると言われています。
さらに、過去の出来事を回想し、それを未来への計画に結びつけることで信念を作りだすのに関与しているのではないかとも推察されています。

そして現代社会では、このデフォルトモードネットワークを妨げる問題があります。
それが、『インターネット依存』です。
インターネット依存は、このデフォルトモードネットワークを乱してしまうとされています。

ちなみに、デフォルトモードネットワークの回復には睡眠と瞑想が効果的だそうです。

創造的アイデアをもたらすもの

ひらめきが起こりやすい時間帯

「ひらめき」には、起りやすい時間帯というものがあります。
ノースウェスタン大学の神経学者Mark Jung-Beemanは、長年の研究の結果、「ひらめき」が目覚めたばかりの早朝に起きやすいということを発見しました。

では、なぜその時間帯に「ひらめき」が起きるのでしょうか。
それは、目覚めたばかりの脳は、まだぼんやりとしていて完全には目が覚めていないからだとされています。
というのも、しっかりと目覚めた状態では、知らず知らずのうちに常識による制限をかけてしまいます。
そのため、まだ完全には目覚めていない状態のときに、普通だと考えつかないようなとっぴな考えが浮かびやすいのだそうです。

ただ残念なことに、多くの人たちにとって朝はとても忙しものです。
とてもベッドの中でまどろんで、難しい問題に考えをめぐらせるようなゆったりとした時間をとっている余裕などはないでしょう。
では、そういう場合はどうしたらいいのでしょう。

リラックスはひらめきをもたらす最強のツール

彼は、「リラックス」が重要であるとも言っています。
リラックスした状態というのが「ひらめき」をもたらす下準備となるそうです。

そして、そのことを証明した実験があります。
ロンドンのゴールドスミス大学の心理学者、ジョイ・バタチャルヤが行ったものです。
被験者にクイズを解いてもらい、その脳波を調べました。
その結果、その人の脳波をみるだけで、その人が8秒以内にクイズを解けるかどうかわかったのです。

クイズが解ける人の脳波の特徴は、右脳におけるアルファ波のリズムが安定していました。
アルファ波というのは、リラックスした状態の時にみられる脳波です。

つまり、リラックスした状態というのは、新しく非凡なアイデアを受け入れやすくなっているのではないかと考えられるのです。
それと逆のパターン、つまり十分なアルファ波がみられない場合には、与えられたヒントをうまく活用できなかったそうです。

それを考えると、何か問題にぶつかって行き詰ったとき、そのまま思考を巡らせるよりも、いったん休憩をとってリラックスするほうが解決策を見つける近道なのかもしれません。

アイデアは落書きから生まれる

授業や会議のとき、なんとなく手持ちぶさたで落書きをするというと、話を聞かずにさぼっているとイメージしてしまいますが、一概にそうともいえないようです。
というのも、落書きをすることで集中力が高まり、記憶力がアップするということがわかっています。
実際、会議中にずっと落書きをしていた人と、していなかった人に会議の内容を聞いたところ、落書きをしていた人のほうがずっとよく、内容を思い出せたそうです。

そして、スケッチや落書きは、理解力や独創的な思考力を高めるとも言われています。
実際、あのスティーブ・ジョブズも、ビル・ゲイツも、アル・ゴアも、アインシュタインも、レオナルド・ダ・ヴィンチも、ニコラ・テスラも皆、落書きを何らかの形で行い、そして結果を残してきています。

レオナルド・ダ・ヴィンチは1万枚ものメモを、エジソンは3500冊ものメモを残しています。
アインシュタインも枕元にもトイレにも、どこに出かける時にも、常に、メモ帳とペンを持ち歩き、何かを閃いた時には、たとえどのような状況であろうとも、それを中断し、その閃きの内容をメモ帳に書き留めていたとされています。

考えをまとめて書くというよりも「思いついたら忘れないうちに書く」ということが大切なのかもしれません。実際、手を動かして書くという行為は脳を活性化します。

「新しいテニス技法の考案」を、同じ時間(1分40秒)ずつ、スケッチブックでアイデアを描き出した場合と、iPhoneアプリでテキスト入力した場合とで、脳の活動の違いがあるのかを調べました。すると、スケッチブックでアイデアを描き出した場合のほうが、iPhoneアプリでテキスト入力したときよりも、前頭葉に活発な血流があったそうです。

そのせいか、落書きには集中力を高める効果があるという報告もあります。
とはいっても、あまり考えずに適当に書く範囲の落書きの話です。本格的に落書きに集中して書く場合は、別ですよ。

イギリスのプリマス大学の研究チームが行った実験です。
40名の被験者に誰かと電話で話をしてもらい、後から話に出てきた名前や場所を思い出してもらうというものです。

その時、半分の20名は、電話をしながら紙に描かれた図形を塗りつぶす作業(落書き)をしてもらい、残りの20名は会話だけ行うように指示されました。
電話が終わった後、電話で話された8つの名前と8つの場所を書き出してもらいます。

すると、落書きをしていたグループでは、平均7.5個思い出せたのに対して、落書きをしなかった方は、平均5.8個しか思い出せなかったそうです。

この実験のリーダーであるジャッキー・アンドレイド氏は、「退屈な話になると人は空想を始めやすくなり、それが集中力や効率低下につながります。単純作業による落書きが、空想することを防ぎ、集中力を高めることになります」と述べています。

ボールを握って単語を覚えると記憶力があがるという実験結果もありますので、手を動かす事がその場への集中力アップの鍵になるのかもしれません。

大笑いで想像力アップ

楽しい時間を過ごすということは、創造力を発揮するために重要です。
実は、「大笑いをすると創造力が3倍になる」という報告まであります。
「大笑い」と「創造力」。
一見、両者には関係がなさそうに思えますが、実はそうでもないようです。

アメリカのメリーランド州にあるバルチモア大学のアリス・アイセン博士が行った実験です。

以下の5つの場合で創造力を調べています。
1. コメディ映画を見て大笑いする、
2. 軽い運動をする、
3. 甘いキャンディを食べる、
4. 数学の講義の映像を見る、
5. 何もしない

すると、1の大笑いをした後が一番創造的になれたのです。
創造力テストの結果は、何もしなかった場合と比べると、なんと3倍以上だったそうです。

では、どうしてそういうことがおこるのでしょうか?
人間の物理的な視野は、悲観的になるほど狭くなるといわれています。
つまり、落ち込んでいる人ほど視野が狭くなりやすいのです。
残念なことに、そうして視野が狭くなった結果、電柱にぶつかったり交通事故に遭ったりしやすくなったりという不慮の事故にまで遭いやすくなってしまうのです。
悪循環ですね。

いっぽう、楽観的だと視野は広くなります。
笑って楽しい気分になれば視野が広がり、普段気付かないことにも気付くようになります。アイデアも湧き出すし、ビジネスチャンスも見つかりやすくなるということのようです。

まとめ

創造的なアイデアを出すコツについてまとめてみました。
結局のところ、ある程度の知識や情報を入れたら、後は考えすぎずリラックスして楽しむのがいいのかもしれません。

脳の取扱説明書 P74、P80
http://retirementaustralia.net/old/rk_0811_honyaku.htm
http://blog.livedoor.jp/beziehungswahn/archives/27824447.html
http://eslmaterials.langrich.com/ted012/
http://www.lifehacker.jp/2011/07/110718airpen01.html
http://www.cyber-u.ac.jp/about/pdf/bulletin/0003/0003_09.pdf

http://puzzle-tokyo.blogspot.jp/2013/03/3.html
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3598858