断捨離とは、モノへの執着を捨て、不要なモノを減らすことにより、生活の質の向上・心の平穏・運気向上を得ようとする考え方のことです。
やましたひでこさんが、2009年刊行の『新・片付け術「断捨離」』で提案しました。
「断」は入ってくるいらないものを断つこと、
「捨」は家にあるガラクタを捨てること、
「離」はモノへの執着から離れること
を意味しているそうです。
そもそもこういう言葉ができたということは、それだけ物を捨てるのが苦手な人が多いということでもあると思います。
まぁ、私もそうですが…。
これには、脳の『保有効果』という奇妙な現象も関係しているといわれています。
断捨離を妨げる要因:脳の『保有効果』
人は、自分が所有したものに対して、突然価値が上がり、手放したくないという思いを抱く傾向があります。
このように「自分が所有しているものに高い価値を感じて、それを手放すことに抵抗を感じてしまう心理現象」のことを保有効果 (Endowment effect)といいます。
使わないと分かっていても、もったいないからとなかなか捨てることができないというのは、この保有効果によるものです。
保有効果は、1970年代初めに、当時ロチェスター大学の大学院生であった経済学者の Richard H. Thaler氏によって提唱されました。
これは、日常の所有物だけではなく、土地や建物、株、恋人の価値まで、さまざまなものに対して現れるといわれています。
投資家が何度も売買している銘柄に強くこだわりを持ったり、長年所有している株が下落しても手放せなかったりして失敗してしまうのはそのためではないかと考えられています。
保有効果の実験
行動経済学者のダニエル・カーネマンが行った実験があります。
被検者の学生をランダムにAとBの2つのグループに分け、Aには大学のロゴ入りマグカップをプレゼントします。
プレゼントした後すぐに、以下のような質問をします。
Aグループ:「いくらならBグループにマグカップを売りますか?」
Bグループ:「いくらならAグループからマグカップを買いますか?」
ちなみに、通常のマグカップは6ドルで販売しているものです。
すると、驚くことに2つのグループがつけた値段には大きな開きがあったのです。
Aグループの平均 7.12ドルで売る
Bグループの平均 2.87ドルで買う
保有効果は、なぜ起きるのか
この保有効果はどうして起きるのでしょうか?
以下の2つの原因が考えられています。
1つ目は、所持しているものに愛着を感じるから(ポジティブな面の過大評価)
2つ目は、所持しているものを失いたくないから(損失への過敏)
この2つの原因のうち、どちらのほうが影響を与えているのでしょう?
スタンフォード大学のナツォン博士らのグループが行った実験です。
24人の被験者に18の異なった値段のついた6つの製品を買ったり、選んだり、売ったりしてもらいました。そして、その時の脳の働きをfMRI (functional MRI)を使って調べました。
すると、保有効果の強い人ほど、物を売る時に島皮質がより強く活動していたそうです。
脳の側坐核(そくざかく)という部位が「得」への快感に、島皮質(とうひしつ)が「損」への不快感に、そして内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)が損得勘定のアップデートに関与していると考えられています。
つまり失う事への不快感が強すぎて、自分の持っているものを実際のものより価値のあるものだというふうに感じているというわけです。
まとめ
断捨離を難しくする要因についてまとめてみました。
自分自身が変化していく過程において、自分にとって必要となるものは変わってきます。
今まで自分を満たしてくれたものに感謝しつつ、スッキリ手放していけるといいなぁと思いました。
参考)
Brian Knutson et. al. Neural antecedents of the endowment effect. Neuron 58, 814-822, June 12, 2008
http://www.cmu.edu/dietrich/sds/docs/loewenstein/NeuralAnteEndowEffect.pdf
実践するために
http://matome.naver.jp/odai/2133077715910584401
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/special/20101125/109339/?P=1&ST=life