よく掃除には運気を上げる効果があるとか、住んでいる部屋の状態が自分の心の状態であるということがいわれています。

どうして、掃除にそのような効果があるといわれているのでしょうか。

掃除の具体的な効果からその理由をみていきましょう。

もたらす5つの効果

実際、掃除をしてスッキリしたという体験をした方もいると思いますが、掃除には、さまざまな現実的な効果があります。

日本そうじ協会理事長の今村暁さんによると、『掃除とは、場を整えて、良い場づくりをすること』だそうです。

そのための大切ポイントは4つ。
『整理』『整頓』『清掃』『清潔』

そして、掃除には5つの効能があるようです。

①精神的効果:気分がすっきりして前向きになる

②肉体的効果:「物が落下する」などの身の回りの物理的危険が軽減する

③経済的効果:自分の持っているものを把握することで、無駄遣いが減る

④時間的効果:物を探している時間が減る

⑤対人的効果:積極的に来客を受け入れることが可能になる

特に、掃除の精神的な効果は大きいようです。
経験的にそれが分かっているからかもしれませんが、僧侶の方の一日は掃除から始まります。
現在ではその効果を期待して、少年や交通違反の「更生プログラム」に掃除を取り入れられたりもしています。

掃除をすると出世する?

おもしろいことに、掃除をする癖のある人のほうが出世しやすいという報告もあるそうです。

2013年にエレクトロラックス・ジャパン株式会社が20~40代の男女600人に行った「掃除に関する意識・実態調査」です。

ほこりに気づいた時にさっと掃除をする『ちょい掃除』。
この『ちょい掃除』をする人の13人に1人が役員クラス。
これが『ちょい掃除』をしない人になると役員クラスは41人に1人。

その差は、約3.2倍にもなります。

そして、『ちょい掃除』をする人は、仕事だけでなくプライベートでも着信やメールのレスポンスが早いのだそうです。

ちなみに、プライベートでの着信やメールのレスポンスの早さは、出世と関係していると言われています。
それだけ他人に対する配慮も行き届いているからかもしれません。

掃除を企業導入するメリット

掃除は個人的なメリットだけではなく、企業にもメリットをもたらします。

主に企業が期待しているのは、次の3つの精神的効果です。

1)心が磨かれて純粋になり、規則正しい行動がとれるようになる

2)謙虚な気持ちで仕事に取り組め、一生懸命勤勉に働くようになる

3)感謝・感動の心が芽生え、仲間同士の連帯感が醸成できる

では、どうしてそのような変化が起きるのでしょうか。

トイレ掃除は価値観を変える?!

2008年大森氏が行った調査によると、トイレ掃除を企業導入した結果、掃除を行った人々になんらかの感情をひきおこしたそうです。

それは、ためらい、嫌々といった否定的な感情、逆に爽快さや達成感といった積極的な感情、なぜ自分がするのかといったようなわだかまりや継続することのマンネリ感のような少し冷めたような客観的な感情、そして開き直っての思いっきりや段々とのめりこんでいくといった熱い主観的な感情など、実に様々なものでした。

一つの仕事を通して、これだけ多種多様な感情が引き起こされるということはあまりなく、今までの考え方や感じ方を揺さぶることになったのではないかとしています。

利己的状態から利他的状態へ

さらには掃除を継続することにより、一定の傾向をもって感情が変化していくことが分かりました。
その傾向には、2つのパターンがありました。

一つめは、楽しみや満足が形あるものから形のないものへと移っていったことです。

入社2年目だと便器がキレイになることに満足感を覚えたり、ワックスをかけることに楽しさを感じる傾向がありました。
ところが、掃除の経験年数が長くなるにつれ、みんなでいっしょに掃除をすることに楽しさを覚えたり、いっしょに掃除をするメンバーの人柄を深く知れたことへの喜びを見出したりするようになったのです。

そして、もう一つが何のために、あるいは誰のために掃除をするのかという目的の変化です。
掃除の経験が長くなるにつれ、掃除をする目的が利己的理由から利他的理由へと変化していきました。

入社 2 年めの人は、自分を磨くため、すなわち自己成長のために掃除をしていたり、掃除の行為自体に楽しみを感じていました。
ところが、掃除の経験年数が長くなると次にトイレを使う人のためやゆっくりと落ちついて使ってもらいたくて掃除をするようになったのです。
自分のためでもなく、会社のためでもなく、損得や見返りを求めることなく、ただただ掃除をしていたのです。

掃除をする人たちに起こった感情の変化は、企業にも思わぬ効用をもたらしました。
具体的には、設備が長持ちする、完成品の不良品率が低くなる、離職率が減るなどといったものです。

掃除をすると幸せになれる

さらには、掃除と幸福度にも関係があるともいわれています。

掃除癖のある人の幸福度が71.2%なのに対し、掃除をあまりしない人の幸福度は61.6%、掃除を全くしない人の幸福度は51.0%だそうです。

ダイエットの成功率も掃除をしない人が44.9%であるのに対し、掃除をする人は74.1%なのだとか…。

まとめ

掃除の効能についてまとみてみました。
掃除が大切なのはいっても、日常の忙しさの中にいるとめんどうに感じることもあるかもしれません。

特に隅々まできちんと掃除をするとなるとそうでしょう。
本当に大変なのは始める前まで、ということもよくあることです。
そういうときは、少しハードルを下げてあげるとよいかもしれません。

参考
1.大森信 企業におけるトイレ掃除活動の意味と効用についての研究:産業経営研究、第 30 号 pp.19-35、2008
2.今村暁 掃除がもたらす5つの効果が”できる人”をつくる! Lifenet journal 2015年6月23日号
3.気付いた時にすぐに掃除をする”ちょい掃除”が出世と幸福の鍵!? PR Times 2014年3月10日号
4.金川宏 清掃活動と企業経営業績の関係性に関する考察-切削加工企業の事例から‐ p88-115