私たちは、実際に持っている能力のどれくらいを使っているのでしょうか。
おそらく、フル活用していると自信をもって答えられる人は、少ないと思います。

一説には、潜在能力の7~8パーセントくらいしか使っていないのではともいわれています。

自分が本来持っている能力を発揮できない原因は、自分自身にあります。
残念なことに、自分でも知らないうちに自分自身に制限をかけてしまっているのです。

能力を発揮したいと思っているのに、自分でそれを邪魔するなんてと思うかもしれませんが、数々の実験がそれを証明しています。

では、どのようにしたら能力を十分に発揮できるようになるのでしょうか?

限界は自分で作っている⁈

何かやりたいと思った時に、『どうせ私には無理』と思ってあきらめたことはないですか?

有名なものに「ノミの実験」があります。

ノミの本来の跳躍力は、約30㎝といわれています。
ノミの体長が2mmであることを考えるとかなりの跳躍力といえるでしょう。

そのノミをガラスのコップに入れて蓋をします。
コップに入れられた当初は、今まで通り飛ぶのですが、当然、蓋にぶつかってしまいます。
それを繰り返していると、ノミはだんだんと蓋にぶつからないような高さまでしか飛ばなくなってきます。

そこで蓋を外しても、ノミはコップの高さより高く飛ばなくなり、コップからは出なくなってしまうのです。
ノミにその能力がなくなってしまったのでしょうか?

実際は、そうではないようです。
コップの高さを超えるくらい飛ぶ能力があるにもかかわらず、飛ばなくなっているのです。

これは、新しくノミを入れたことで分かりました。
新しくコップに入れられたノミが高く飛んでコップから出るのを見ると、今まで飛べなくなっていたノミも以前のように飛んだのです。

ノミだからこういうことが起きたのかというとそうではありません。
人間にも同じようなことが起きるようです。

それを示す実験があります。

アメリカのカリフォルニア州スタンフォード大学で行われた実験です。
学生を2つのグループに分けます。
一方のグループには、「人の精神力には限界がある」という説についてレクチャーをします。
そして、もう一方のグループには、「人の精神力には限界がない」という説についてレクチャーをします。
それぞれを信じ込ませてから、集中力が必要となる作業をしてもらいます。

すると、「人の精神力には限界がない」という説を信じた学生の方が、はるかに高い実績を上げたそうです。

さらにおもしろいのが、「人の精神力には限界がある」と思っている学生は、「自分次第でどうにでもなる」と思っている学生に比べて、ジャンクフードの誘惑に負けて食べてしまう人が24%も多く、やるべきことを先送りにしてしまう人も35%も多かったそうです。

そして、実はこの実験を行う前はというと、ほとんどの学生は「精神力や集中力には限界があるから、時々休憩した方がいい」という説を、元から信じていました。
ところが、精神力には限界はないのだということを教わることで、集中力が必要な作業でも、これまで以上の力を発揮したというのです

つまり、自分の信じていることが、自分の行動やパフォーマンスにも影響を与えているということです。

自信を持てればきれいになれる

おもしろいことに、自分の思い込みは外見までをも変えてしまうようです。

以前に、Facebookでダヴの「リアル・ビューティー・キャンペーン」の一貫として作成された動画を見ました。
http://news.livedoor.com/article/detail/8781001/

自分にコンプレックスのある女性に、2週間貼るだけで美容効果があるというパッチを貼ってもらって、毎日ビデオダイアリーを撮影するというものです。

ネタバレしてしまえば、そのパッチには何の成分も含まれていません。
ところが、その何の効果もないはずのパッチが驚くべき効果をもたらします。
美しくなれるという暗示にかかり、自分に自信を持ってキレイになっていったのです。

つまりは、それだけ自分に自信を持つということがパワフルだということです。
私たちは、ついつい自分に対して厳しくなることがあります。
しかし、それは自分にある可能性を自分で狭めてしまっている可能性があるのです。

成功の秘訣は自信を持つこと

成功するためには、「プラスの自己イメージ」を持つ、つまり、自分の能力に自信を持つということが重要だといわれていますが、前述の二つの実験からもそれがわかります。

心理学者で哲学者でもあるウィリアム・ジェームスにいたっては、「人間が失敗する唯一の理由は、自分に自信が持てないことだ」とまで言っています。

では、自分に自信があることが現実の生活にどのような影響をもたらしているのでしょうか。

実は、自信があると仕事の業績が上がったり、成績が良くなったりするという報告があります。
ペンシルベニア大学のマーチン・セリグマン教授が大手生命保険会社の営業マンを対象に行った調査です。

自分は成功すると思っているかどうかと売上との関係について調べました。
結果はというと、自分は成功すると思っている人の売り上げは、そうでない人の売り上げより37%も多かったのです。

とはいっても、成績が良かったから自信がついたんじゃないの? という疑問が出てくると思います。
しかし、自信を持つことが能力発揮に関係するということを示す実験があります。

自信を持つことで成績が上がる

名門大学に通うアメリカ人の女子大学生に対象に行った実験です。
メンタルローテーションタスクといって、一つの図形を提示し、それと同じ形の図形(回転して示されている)を選んでもらいます。

一般的にこの図形を回転させる問題は、女性よりも男性の方が得意とされています。

そこで、この実験を行う前に女子大生にアンケートに答えてもらい、自分に対するイメージが正答率にどのように影響を与えるのかをみました。
具体的には、アンケートで性別を質問した場合と所属大学を質問された場合の正答率の違いをみたのです。

すると、この二つの質問の違いだけで、正答率に違いがでたのです。

性別を質問された場合には、正答率は男子学生の64%しかなかったのに対し、所属大学を質問された場合には、正答率は男子学生の86%まで上がったそうです。

事前のアンケートが自分に対するイメージを変え、それが成績にも影響を与えたのです。
つまり、図形の回転問題が苦手な女性であるというイメージを持つのか、名門大学に所属している優秀な人物であるというイメージを持つのかが成績を左右したということです。

それだけ、私たちは知らないうちに自分自身に制限をかけてしまっているのかもしれません。

自信を持つことは、自分を自身がかけた制限から解き放ち、自分の持つ潜在能力を発揮するためには重要なのでしょう。

自己肯定することでIQが上がる

実際、「自己肯定することで、IQがあがる」ということがいわれています。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学、米プリンストン大学、米ワシントン大学が行った研究です。

ニュージャージーの貧困層への配給所に2年以上通う150人を対象に行っています。
自分が過去に達成したことを思い出し、それについて語り、録音した後に、知能テストを行いました。
すると、自分を肯定することで、認知能力が向上したのです。

IQは、10ポイントも上昇。
それだけではありません。能力が高くなることで生活のクオリティまで改善したというのです。

今までは、困ったときに人に自分の状況を知らせる事すら思いつかなかった人たちが、自分から地方自治体の援助サービスを探そうとする意欲まで出てきたそうです。

つまり、自分自身を肯定するというとてもシンプルなことが、彼らにとって絶大な効果があることを示しています。

ところが、この現象は裕福な環境の人にはみられなかったそうです。
貧困層の人は、それだけ自己肯定感が低いということなのかもしれません。
そのため、それを是正することで、本来の能力を発揮できるようになったのでしょう。

日本人は、謙虚であることを美徳としています。
そのため、貧困層でない人達の中にも、自分に対する評価が低いことが少なくありません。
つまり、本来持っている自分の能力を十分に発揮できていない可能性があるのです。

自意識過剰になる必要性はありませんが、もう少し自分のことを認めてあげることが能力発揮の鍵になるかもしせん。

パワーポーズで自信をつける

そうはいってもいきなり「プラスの自己イメージ」を持とうと思ってもハードルが高いこともあるでしょう。

実際、自分にネガティブなイメージが出てきたときに、むりやりポジティブに変換しようと思っても逆効果のことがあります。
そういうときには、少し胸を張って姿勢を正してみるのもいいかもしれません。
脳は意外と単純なものです。
少しの気分くらいであれば、姿勢で変わってしまいます。

できれば自分で自分の足を引っ張るようなことはやめたいものです。

まとめ

能力を発揮するコツについてまとめてみました。
自分を認めてあげることが、自分を縛っている制限から解き放ち、潜在能力を発揮するための第一歩なのかもしれません。

参考
・Ego depletion-Is it all in your head? Implicid theories about willpower affect self-regulation
http://pss.sagepub.com/content/early/2010/09/28/0956797610384745
・Self-Affirmation Could Give People In Poverty Added Mental Boost, Study Suggests
http://www.huffingtonpost.com/2013/12/25/self-affirmation-poverty-mental-boost_n_4461718.html

Boosting Self-worth can couteract cognitive effects of poverty.