緊急事態制限に自粛要請と突然の環境の変化に戸惑っている人も多いのではないでしょうか。

このような環境の変化は、ストレスになってきます。
この状況下では、程度の差はあれ、誰もがストレスを抱えているといっていいでしょう。

ストレスは心だけではなく、身体にも影響を与えます。

心と身体は別々のものではなく、お互いに影響しあっているのです。
ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなったり、
身体を動かすと気分がスッキリしたり。

参考)ストレスとはーストレスを溜めないための豆知識ー

では、実際に身体と心はどのように関係しているのでしょう。

身体が心に与える影響

姿勢が心にもたらす効果

姿勢を正す事には、さまざまな効果があるということが知られています。
よく知られているものとして、姿勢が悪いとコリや痛みといった身体の不調があります。
それに加え、姿勢が悪くなると代謝が悪くなり、肥満になりやすくなります。

姿勢は単に身体面の不調だけではなく、私たちの気持ちにも影響を与えるようです。

姿勢を正すとストレスが緩和される

米国心理学会で発表された研究です。
約74人を対象に椅子にくずれるように座る人と背筋を伸ばして座る人を無作為に割り当て、調査しました。
対象者たちの背中といすの背もたれはテープで30分間固定され、その後彼らの気分や自己評価、脅迫の知覚レベル、そして血圧と心拍数を測りました。

すると、まっすぐに固定されて座っていた人は、気分がよく、恐怖感のレベルも低く、自己評価も高かったそうです。
反対にくずれる姿勢で座っていた人はネガティブな言葉や悲しみの徴候である言葉をよく使うことがわかりました。

つまり、正しい姿勢を通してストレスを緩和させることができ、それと同時に感情を和らげることができるということです。

姿勢を正すと自信がつく

姿勢に関して、マドリッド自治州大学の心理学者ブリニョール博士が行ったおもしろい実験があります。
71人の学生に対して、姿勢が自己評価に与える影響を調べました。
学生に以下のアンケートに答えてもらいます。
「将来仕事をするにあたって、自分の良いところと悪いところを書き出してください」
それを背筋を伸ばして座った姿勢の場合と背を丸めて座った姿勢の場合で比べました。

さすがにアンケートの内容、自分の良いところと悪いところに関する項目は変わりはなかったのですが、背筋を伸ばして書いた場合の方が自分の描いた内容に対して確信度「確かにそうだ」と思う程度が高かったそうです。

つまりは、姿勢を正すことは自分の出した答えに対する自信につながっているということです。
姿勢ひとつで、それくらい変わってしまうのです。

このように身体と心が関係していることを昔の人たちは経験的にわかっていたようです。
私たちが日ごろ使っている言葉をみるとそれが分かります。
しかも、おもしろいことに日本語と英語ではその文化の違いを反映したような表現がみられるのです。

日本は昔から内面を重視する文化があり、「気」を大切にします。
そのため、「気合を入れる」とか「病は気から」といった表現がみられます。

いっぽう、英語では身体を重視するせいか「Chin up(顎を上げろ、うつむくな)」や「Cheer up(声をあげろ)」といったように身体から気持ちに影響を与えるような表現が使われます。

心がほんの少し疲れたとき、身体から心にアプローチするというの一つの方法かもしれません。

運動は脳の疲れをとるのに最適

身体を酷使していなくても、頭をフル回転させて考え事をしたとき、疲れを感じることがあると思います。
そういった場合には、じっと身体を休めるよりも適度に身体を動かしたほうが疲れが取れやすいかもしれません。

というのも、運動は脳の疲れをとるのに最適だといわれているからです。
私たちの脳を養う血管は、運動をすることで増えると考えられています。
実際、運動をすると脳に行く血液の量は増えることが分かっています。
そして、その血流にのって栄養が運ばれ、脳に栄養が行きわたりやすくなるというわけです。
当然、脳の細胞は活性化します。
その結果、脳の細胞は心への働きかけがある脳内物質を多く分泌するようになります。

つまり、運動をすると気分一新。
やる気が出て、集中力が増し、体はきびきび動いて、仕事がはかどるという効果が期待されるわけです。

実際、心のバランスをとるのに重要とされているセロトニンは、リズム運動を行うことで増やすことができるとされています。

リズム運動

日常の生活に取り入れやすいリズム運動としては、呼吸を意識する、よく噛んで食べる、歩くといったものがあります。
もう少し負荷をかけるのであれば、ジョギング、サイクリング、水泳、ダンス、踏み台昇降などといったところでしょうか。

10分~30分を目安に始めるとよいそうです。
というのも、セロトニンは、運動を始めてから5分くらいで血中濃度が上がり始め、20~30分でピークに達します。
つまり、5分程度の短時間やっただけでは効果が薄いということです。

運動に最適な時間帯

そして、運動する時間帯ですが、ダイエットには午前中が効果的という説もありますが、身体への負担ということを考えると午後がお勧めです。
特に、糖尿病や高血圧など血管に負担がかかる病気をかかえている人は午後に行ったほうがよいでしょう。

というのも午前中は身体が完全に眠りからさめきっていない状態です。
そのため、午後に比べて午前中の方が運動前後での心拍数や血圧の差が大きくなります。
つまりは、身体への負担が大きくなるわけです。

無理は禁物

もちろん運動が脳にいいからといっても無理はいけません。
逆効果になります。

最初に「脳疲労」という概念を定義した九州大学の藤野名誉教授によると、脳疲労回復のために大切なのは自分で自分を禁止することはできる限りしないこと自分によって心地よいことをひとつでもすることが大切だとしています。
そのためには、たとえ健康に良いとされていることであっても嫌であれば決してしないということだそうです。
つまり、無理せず楽しめる範囲で身体を動かすということがポイントということでしょう。

心が身体に与える影響

身体が心に影響を与えるように、心も身体に影響を与えます。

たとえば、ストレスが強いと自律神経が乱れ、さまざまな病気を引き起こすことが知られています
(詳細は、ストレスとはストレスをためないための豆知識)。

幸せを感じていると死亡リスクが低下する

ストレスが身体に悪いというのはなんとなく想像がつくと思います。
その逆で、幸せを感じていると死亡リスクが低下するという報告もあります。

University College LondonのAndrew Steptoe教授が52歳~79歳の3,853人を対象に行った調査です。
対象者に心理状態を問ういくつかの質問に対し5段階評価で答えてもらいます。
(Ecological Momentary Assessmentという現象を日常生活下で、その瞬間に評価・記録することによって記憶によるバイアスを避ける方法を用いています)

その後、幸福感、満足度、高揚感といったポジティブな感情を測る項目における回答結果を総合的に評価して、参加者の幸福度を判定しました。
そして、5年後に参加者の状況を調べました。

すると、そのときの幸福度によって死亡率に違いがみられました。
最も幸福度の高いグループの死亡率が3.6パーセント、中間が4.6パーセント、最も幸福度の低いグループにいたっては7.3パーセントと大きな差があったのです。
参加者の健康状態や年齢、生活習慣などその他の様々な要因を考慮した結果、幸福度を主観的に感じている人は、なんと死亡リスクが35%も低かったそうです。

では、なぜ幸福度を感じると死亡リスクが下がるのでしょうか?
これには心の調子によって変わる免疫系の物質が関与しているのではないかと考えられています。
幸せを感じるとその物質のバランスが良くなるのです。

その物質というのが次に挙げる2つです。
まず1つ目がナチュラルキラー細胞これが正常に働いていると、ウイルスに乗っ取られた細胞を殺してくれたり、癌になりにくかったりします。

そして、2つ目がインターロイキン6という痛みや炎症の度合いの指標になる物質です。
リウマチの患者さんではこの物質が高いそうですが、落語などを聴いて思いっきり笑ってもらうとこのインターロイキン6のレベルが下がり、痛みが和らぐそうです。

痛みを感じること自体もつらいですが、痛むことによって血管が収縮したり、筋肉が硬直して血管の状態を悪くなったりする可能性もあります。

ただ、何に幸せを感じるかは、人それぞれ。
自分の気持ちに正直になってみるのが健康への近道かもしれません。

まとめ

心と身体の関係についてまとめてみました。
心と身体、どちらか一方にフォーカスが当たりがちですが、どちらも関係しあっているものです。
片方に不調を感じたときには、もう一方にも注意を払ってみるのもよいかもしれません。

参考)
1.https://harmonista.jp/exercise/effect_of_exercise/
2.http://www.boocs.jp/nouhirou/index.html
3.http://president.jp/articles/-/12862
4.http://www.it-hiroshima.ac.jp/faculty/environment/global/teacher/nishimura_kazuki/seminar/
5.https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/113.html
6.Andrew Steptoe and Jane Wardle. Positive affect measured using ecological momentary assessment and survival in older men and women