現代社会はストレス社会ともいわれています。
内閣府の調査によると55%もの人が「精神的疲労やストレスを感じている」そうです。
特に多いのが、20歳代後半の女性で、70%を超えています。

衝撃的なのは、2008年に行った調査によると10代でもストレスを感じている人が半数以上もいるということです。
中でも特筆すべき点は、孤独を感じている子どもの割合が高いということです。

15歳の子どもでは29.8%。
約3割もの子どもが孤独を感じていることになります。

この数値は、調査を行った24か国の中で、日本がとびぬけて高いもので、
他の先進国と比べると4~6倍の高さです。

今や社会問題であるといっても過言ではないストレスですが、ストレスを感じると回答しなかった人達は、ストレスのない生活を送っているのでしょうか?

逆に、忙しすぎて自分が抱えているストレスに気づいていないだけではないか?という指摘もあります。

そこで、ストレスとは何か、どういう問題を引き起こすのかについてまとめてみました。

ストレスとは

そもそもストレスとはなんなのでしょうか?

これは、1930年代に生理学者のハンス・セリエが「ストレス学説」を提唱したことに由来します。

彼は、もともとホルモンの研究をしていたのですが、あるとき一つの発見をしました。
その発見とは、生物が不快な刺激を受けるとその刺激の種類とは関係なく、ある共通のホルモンを出すというものです。
その共通のホルモンが「ストレスホルモン」と呼ばれるものです。

現在は、「なんらかの刺激が身体に加えられた結果、身体が示したゆがみや変調」のことをストレスといいの原因になる刺激はストレッサーと呼ばれています。

よくストレスとストレッサーの関係について例えとして使われているのが、ゴムボールです。
ゴムボールを指で押すとへこみます。
ゴムボールのへこんだ状態が「ストレス」、押している指が「ストレッサー」です

最初は球体だったゴムボールが、指で押すという(ストレッサーの)刺激を受けて、へこんだ状態(ストレス)に変わります。

通常であれば、このへこんだ状態は、ゴムボールから指を離して(ストレッサーから解放されて)、少し時間が経つと、元の球体に戻ります。
しかし、押す力が強すぎたり、あまりにも長い時間ゴムボールを押し続けたりするとゴムボールは元に戻らなくなってしまいます。

私たちの身体も同じです。

通常であれば、ストレッサーにさらされて体調を崩したとしても、そのストレッサーから離れ、休みをとることで、人の身体の持つホメオスターシス(生体恒常性)が働き、元の健康な状態に戻ることができます。

とはいっても、それはストレッサーが軽いものだったり、わずかな時間だったりする場合の話です。
これが、ストレッサーが強すぎたり、あまりにも長い間、ストレッサーにさらされていたりすると、身体をもとの状態に戻すのが難しくなり、病気になったりしてしまうのです。

しかも、ゴムボールの場合は見てすぐわかりますが、人の場合、特に自分のことになるとストレスの状態にあるかどうかも気づきにくいというの問題です。

ストレスを引き起こすもの

ストレスを引き起こすストレッサーには、以下の4つがあるといわれています。
1. 物理的ストレッサー:暑い、寒い、騒音など
2. 化学的ストレッサー:酸素不足、栄養不足、薬害、たばこ、お酒など
3. 生物学的ストレッサー:病原菌の侵入、ハウスダスト、花粉など
4. 精神的ストレッサー:人間関係のトラブル、精神的な苦痛、不安・恐怖・怒り・憎しみなど

物理的ストレッサー

実際に気温や気圧の変化は自律神経に影響を及ぼすことがわかっています。

外の気温が高い時は、副交感神経が優位に働いて血管を広げて、体の熱を放出します。
逆に、気温が下がると交感神経が興奮し、心拍数や血圧が上昇してきます。

このように外の気温によって、副交感神経が優位に働いたり、交感神経が優位に働いたりするわけです。
その働きによって、気温の変化に対応し、身体の体温を一定に保とうとしているのです。

とはいっても、5度以上の急激な気温の変化には自律神経はついていけないのだそうです
つまり、気温の変化が激しいと自律神経に負荷がかかって、それが蓄積されると自律神経の働きが乱れ、体調不良をきたすこともあるということです。

最近では、ヒートアイランド現象による熱中症の増加が社会問題になっています。

化学的ストレッサー

化学的ストレッサーの一つである酸素不足ですが、日常に潜む原因の一つに呼吸が浅いことがあります。

例えば、スマホ。
長時間使用することで呼吸が浅くなり低酸素になるといわれています

これは熱中したときに息を詰めてしまったり、胸やお腹に力が入ってしまったりすることによるそうです。

他にも、長時間PC作業や細かい作業をしたり、テレビを見たりということや換気の悪い部屋というのも呼吸が浅くなる原因になってきます。

ライフイベントとストレス

とかく変化の時というものは、ストレスがたまりやすいと言われています。
驚かれるかもしれませんが、それは何も悪い方への変化に限ったことではなく、良いほうの変化であったとしてもストレスを感じてしまうそうです。

1960年代にアメリカの社会生理学者であるHolmesとRaheがライフイベントとストレスの関係を調べた「社会再適応評価尺度」というものがあります。

それによると、1位が配偶者の死、2位が離婚、3位が夫婦別居生活とトップ3が夫婦関係の間で生じていることがわかります。

そして、普通であれば喜ばしいことである結婚が7位、妊娠が12位、個人的な輝かしい成功でさえ25位にランクインしています。

ちなみに…
勤労者のストレストップ5は
1.配偶者の死、2.会社の倒産、3.親族の死、4.離婚、6.夫婦の別居

大学生・短大生では
1.配偶者の死、2.近親者の死、3.留年、4.親友の死、5.100万円以上のローン

主婦では
1.配偶者の死、2.離婚、3.夫の会社の倒産、4.子供の家庭内暴力、5.夫の浮気
だそうです。

変化のスピードが速いと言われるこの時代、変化の時期にはストレスはつきものと考えて、日々のストレスをためない工夫というものが必要なのかもしれません。

ストレスによる身体の反応

では、ストレッサーにさらされると身体はどのように反応するのでしょうか。

ストレスホルモンを発見したハリスが行った実験です。
彼は「ストレスが長く続いたら生物はどうなるのだろう」という疑問を抱き、ラットを使って実験を行いました。

行った実験は、以下の4つです。
1. 寒い夜にラットを入れたゲージを屋上に置きっぱなしにす
2. 一定の間隔でラットに電気信号を与え続ける
3. ラットを強制的に泳がせ続ける
4. 板にラットを磔にしておく

すると、どの実験でも、結果は同じでした。
ラットは死んでしまったのです。
それも、凍死や溺死などの物理的な要因が原因ではありません。
ラットにとっては非常にかわいそうな実験ではありますが、これによって「ストレス」がいかに身体に害を与えるのかがわかりました。

そして、ストレッサーにさらされた時のラットの反応というものも非常に意義深いものです。
ストレッサーにさらされた時、最初は激しく抵抗します。
しかし、どんなに抵抗してもストレス状態から脱出できないとわかると、やがて何もしなくなり、じっとストレスに耐えるようになってしまうのです。

そして、ストレッサーが加わってから死に至るまでの間に、べてのラットの身体に「胃潰瘍」「胸腺・リンパ腺の委縮による免疫力の低下」「副腎皮質の肥大」という全く同じ3つの反応が見られたのです。

これは、もちろん私たち人間にも同じ反応が起こってきます。

ストレスの4つの段階

ストレッサーにさらされた直後というのは、自律神経のバランスが乱れ、血圧が下がったり、体温が低くなったりします。
これがショック期です。

すると次に、このストレスに適応しようと身体が反応し、体内でアドレナリンやACTH(副腎皮質刺激ホルモン)といったホルモンが分泌されます。
これが反ショック相と呼ばれる状態です。
ここまでが警告反応期です。

この時期が過ぎると抵抗期に入ります。
ストレッサーに抵抗しようと身体が頑張って、身体の機能を活性化し、次第にストレスに順応するようになります。

とはいっても、この頑張りにも限界があります。
ある程度の時期までは頑張るのですが、対応できるエネルギーが枯渇し、消耗してきてしまいます。
これが疲憊期(ひはいき)です。
こうなってくると身体に不調をきたすようになってしまい、病気になるということが起こってきます。

ストレスによっておこる病気

では、ストレスが引き起こす病気にはどういうものがあるのでしょうか?

うつ病や神経症といった心の病気以外にも身体の病気も引き起こすことがわかっており、ストレス関連疾患と呼ばれています。

主なストレス関連疾患には、次のようなものがあります。

消化器系:胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、慢性膵炎
循環器系:冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)、高血圧
呼吸器系:気管支喘息、過換気症候群
皮膚:アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、蕁麻疹
神経・筋肉系:筋緊張性頭痛、片頭痛、自律神経失調症
内分泌・代謝系:糖尿病、食思不振症

ストレスが引き起こす脳の変化

日々のストレスが脳に与える影響は大きなものがあります。
イエール大学精神科神経生物学のRajita Sinha教授は、「健康な人でも繰り返しストレスを経験すると前頭葉に萎縮をきたす」と述べています。

この前頭葉の委縮(前頭葉が小さくなること)というのは、大きなストレスがあったから起きるというわけではなく、生涯に起きるストレスの合計が関係するというのです。

18歳~48歳の健康な103人(男性68%)を対象にMRIを使って行った実験です。

被験者には、離婚、家族の死、家の喪失、失職などのつらかった経験を話してもらい、脳の画像をとりました。
すると、今まで起きたストレスの積み重ねが大きいほど、内側前頭前皮質(ないそくぜんとうぜんひしつ)、島皮質(とうひしつ)、前部帯状回が小さいことがわかりました。
つい最近経験したつらかったことであっても前頭葉の灰白質(神経細胞がある場所)が小さくなっていたそうです。

ストレスが海馬の委縮をきたすという報告もありましたが、同じように感情や認知、欲望、衝動に関係する前頭葉にまで影響を及ぼしていたのです.

では、前頭葉の働きが鈍くなったら私たちはどうなるのでしょう?

衝動を抑えられなくなったり、論理立てて考えたり、他人に共感することが難しくなります。
そのため、ちょっとしたことでイライラしたり、きれやすくなったり、アルコールや薬物などに依存しやすくなるのではないのかと考えられるのです。

ストレス解消法

ストレスをためないためには、まずストレスに気づくことが大切です。
ストレスに気づかないままだと知らず知らずのうちにストレスをため込んでしまうことになってしまいます。

そして、ストレスに気づいたら、そのストレスから逃げるという選択肢を持ちましょう。
実際、同じストレスにさらされ続けたとしても逃げるという選択肢を自分に許すだけでストレスが軽減されるといわれています。

その他にも、ストレスを解消する方法としては、リズム運動や十分な睡眠、トリプトファンを多く含む食事の他、日光に当たること、自然に触れることなどがあります。
ストレスを感じたら自分に合った方法を試してみるとよいでしょう。

まとめ

ストレスについてその原因と引き起こす問題、そしてその解消法についてまとめてみました。
身近に潜むストレスですが、意外とそのストレスの蓄積には自分でも気づきにくいものです。
早めにストレスに気づくことがストレスをためないための第一歩です。ときおりストレスがあるかもという前提をもって、振り返ってみるとよいかもしれません。

参考) 夏目誠 村田弘. ライフイベント法とストレス度測定 Bull. Inst. Public Health, 42(3); 402-412:1993