私たちの幸せは人間関係で決まってくるといわれています。
これは、ハーバード大学が75年という長い歳月をかけて行った調査(Grant and Glueck study)でも指摘されています。
では、どうして人間関係によって幸せは決まってくるのでしょうか。
これには、別名「幸せホルモン」と言われる『オキシトシン』が関係しているかもしれません。
幸せホルモン「オキシトシン」の働き
昔からオキシトシンは、
子宮を収縮させて出産を促したり、
授乳する時の刺激によって母乳を作り、母乳を出すのを促進させたりする
物質として知られていました。
しかし、それ以外にも人との密接なかかわりでオキシトシンの分泌が促され、
人への親近感・信頼感を増す作用があることが分かってきました。
そして、このオキシトシンですが、脳の疲れをとるともいわれています。
オキシトシンは、そのほかの神経に作用する物質とも関係が深いことが分かっています。
その一つがやる気と関係あるドーパミン、
もう一つが精神のバランスをとるのに重要な働きをしているセロトニンです。
セロトニンとオキシトシンの関係
セロトニンが不足すると精神のバランスが崩れて、
暴力的になったり、うつ病を発症したりするといわれています。
セロトニンの神経細胞にオキシトシンの受容体があります。
オキシトシンが分泌されるとセロトニンも活性化してきます。
ドーパミンとオキシトシンの関係
オキシトシンを分泌している神経は、ドーパミン神経によって周囲を取り囲まれています。
そして、ドーパミンが放出されると、その刺激でオキシトシンも連鎖的に分泌されます。
その結果として、ストレスが軽くなって幸福感が得られるという効果もあようです。
自閉症とオキシトシンの関係
いろいろな効果がいわれている『オキシトシン』ですが、実は最近、自閉症との関係でも注目を浴びています。
2010年フランスの認知・社会神経科学センターの研究者たちが発表した実験です。
高機能自閉症またはアスペルガー障害を持つ13人を対象に、オキシトシンの効果を調べています。
オキシトシンを吸入するグループと吸入しないグループに分け、「ボールをパスする仮想ゲームを行う」「人の顔写真を見る」という2つの実験を行いました。
すると、オキシトシンを吸入したグループでは、人の顔を見た時により目に注意を払います。
目は社会的な情報を含む部位とされ、私たちは顔の中でも目をみてその人個人やその人の感情を判断すると考えられています。
また、3人の架空のパートナーの誰かにボールをパスするというオンラインゲームにおいても違いがみられました。
健常者は3人のプロフィールを気にして、ボールを渡す回数に差が出るのに対し、被験者たちは、ほぼ同等に3人にボールを渡しました。
ところが、オキシトシン吸入後はボールを渡す回数に差が出るようになったのです。
オキシトシンによって社会的な手がかりを心に留めやすくなった。
つまり、社会性が向上したということです。
オキシトシンを増やすには
現代は、パソコンの普及をはじめ、さまざまな自動化が進んでいるため、人との関わりが少なくなっています。
そのため、残念ながらオキシトシンが分泌されにくい社会になってきているのではないかということが指摘されています。
というのも、オキシトシンは、家族団らんの時間を持つことや夫婦や恋人、ペットと触れ合うこと、感情を素直に表現すること、親切を心がけることによって分泌が増えるのです。
まとめ
幸せホルモンともいわれるオキシトシンの作用についてまとめてみました。
オキシトシンを増やすという観点から考えても、人とのつながりを大切にすることが、幸せへの第一歩なのかもしれません。
参考
脳の取扱説明書 p148
愛情に関連するホルモン『オキシトシン』が自閉症を改善させる?!
Elissar Andari et.al. Promoting social behavior with oxytocin in highfunctioning autism spectrum disorders. PNAS March 2, 107(9), 4389-4394, 2010