第一印象とは、初対面のときに相手に抱く印象のことです。

最初が肝心といわれるように、何をするにおいても最初の印象は大切です。

というのも、第一印象は、相手とより良い関係を築けるかどうかの鍵を握っています
初めに受ける印象ひとつで、その後のその人との関係性まで変わってしまいます。

これは、古くから経験的にも分かっているようで、古代ギリシャの哲学者プラトンも“The beginning is the most important part of the work. 仕事においては最初が最も肝心であると言っていたとされています。

同じ行動をとったとしても、「良いイメージの人」と「悪いイメージ」の人とでは、その人から受ける印象は違ってくるというのはよくあることです。

では、どうしてそういうことが起きるのでしょうか、最初の印象をよくするにはどうしたらよいのでしょうか。

なぜ最初が肝心なのかー初頭効果ー

想像以上に私たちは、最初に抱いた印象の影響をうけているようです

このように最初に作られた印象が後の情報に影響を及ぼすことを「初頭効果」と言います。

人や物に対して抱いた最初の印象がその後もずっと残ってしまうのです。

では、どれくらい最初の印象の影響を受けてしまうのでしょうか。

アメリカの心理学者 Solomon Aschが行った実験です。
ある人の性格について
「知的なー勤勉なー衝動的なー批判的なー頑固なー嫉妬深い」という順番で言われた場合と
「嫉妬深いー頑固なー批判的なー衝動的なー勤勉なー知的な」という順番で言われた場合
でのその人の印象を比べました。

「知的なー勤勉なー衝動的なー批判的なー頑固なー嫉妬深い」という順番で言われた場合、つまり最初がポジティブな言葉のときには、グループの人たちの多くが、その人のことを「いい人だ」と評価しました。
しかし、それに対して、逆の順番で言われた場合、つまりネガティブな言葉が最初にあったときには、グループの人達の多くは、その人のことを「悪い人だ」と評価したのです。

つまり、最初に提示された言葉が印象に残りやすいということです。
単なる言葉の提示でさえも、最初の印象がその人の評価にかかわっていたのです。

では、初対面の時に印象をよくするにはどうしたらよいのでしょうか?

よく言われているのが、以下の6つです。
1. 笑顔が良い
2. 明るい口調や表情:感情を表現する
3. 落ち着いている
4. 名前を憶えている
5. 相手の意見や言葉を否定しない
6. 話を聞いてもらったことに感謝する
だそうです。

笑顔は周りの人を幸せにする

第一印象に最も影響を与えるのが視覚情報であるといわれています。
しかも、出会って数秒でその印象が決まってしまうという報告もあります。

では、出会ってたったの数秒で相手に良い印象を与えるにはどうしたらよいのでしょう。

そこで最も大切になってくるのが笑顔です。
というのも、私たちの脳には顔を認識するための特別な場所があります。
要するに、瞬間的に人の表情をみているということです。

そして、私たちの笑顔には相手を楽しくする効果があります。

というのも、私たちは、相手の表情を見ただけで、相手と同じような感情が出てくると言われています。
これは、私たちの脳にミラーニューロンという細胞があるためにおこるとされています。
ミラーニューロンの働きによって、私たちは相手の表情を見ると、無意識のうちにほとんど瞬間的に相手の表情をまねしてしまいます。

この反応が、かなりすばやく、私たちが「相手がどんな表情をしているのか」ということを意識するよりも先なのだそうです。

つまり、私たちが笑顔でいれば、相手も気づかないうちに笑顔になりやすく、私たちが不機嫌な顔をしていれば、相手も不機嫌な顔になりやすいということです。

突然バスの停留所で誰かが笑いだしたらどうなるのかということを調べた実験動画を見たことがありますが、まわりの人たちは全員つられて笑っていました。
私にも似たような経験があります。
特におもしろいことがあったわけではなかったのに、まわりにつられてしまったのです。

また逆に「笑顔が楽しい気持ちを作る」ということも分かっています。
笑顔でいることが自分を楽しい気持ちにするだけでなく、相手も楽しい気持ちにする効果があるということです

とはいっても、むりやり笑顔をつくるというのは考えものです。
私たちの脳は、顔の中でも特に目に意識が向くようになっています。
つまり、目が笑っていないと笑顔を作っていても違和感を覚えてしまう可能性があります。

明るい口調は元気の素

元気がよく明るい声を聞くだけで、なんとなくこちらまで元気になってくることがあります。
これは、私たちが聞く声(音)が、扁桃体という感情を感じる場所にも連絡しているからです。
逆に、声のトーンで相手の状態がわかるということもあるでしょ。

一般的に、悲しい音楽は、静かでゆっくりとした低音であり、幸福感が伝わる声や音楽は大きくて速く高い音であるといわれています。
音楽だけでなく、普段の会話でも楽しい時には声のトーンが高く、声も大きく、早口になるとされています。
逆に、元気がない時というのは、たいてい、いつもよりも小さな低い声で話しています。

つまり、自分が本当に楽しんでいるとそれが声に現れ、それを聞いた相手も楽しい気持ちになってくるというわけです。
でも、誰よりも自分の声を聞いているのは自分です。
そのため、楽しい時には更に楽しくなり、元気がない時には更に元気がなくなるという循環がおきやすいのかもしれません。

政治家の印象も声によって変わるということもわかっています。
イタリア、フランス、ポルトガルの政治家の声を比較した実験では、より高い基本周波数で、ピッチの幅がせまい声は、正直で安心感のある指導者だという印象を与えるそうです。
逆に低い声は、相手に威圧感を与えます。
そして、指導者としては、イタリア人には低い声が、フランス人には高い声が好まれるんだとか。
それは、イタリア人がより支配的指導者を好み、フランス人がより有能な指導者を好んでいるからなのではないかと推察されています。

そして、よい声を出すための2つ重要なポイントが身体づくりと呼吸です。
ちょっと元気がないなと思った時に試してみるのもいいかもしれません。

① 身体づくり:筋肉をほぐす(各パーツ5回ずつ)
顎:前後左右に動かす
肩:後ろで手を組んで上下に動かし、肩甲骨を柔らかくする
首:右手を腰に左手で首をゆっくりと左側に倒す。同様に左も行う。
上半身:両手を組んで上に挙げ、肋骨の下を伸ばすように右に曲げる。同様に左も行う。

② 呼吸を整える
腹式呼吸を行う(5分間)

相手の名前を覚える

初対面で人との関係性を築くには、相手に自分の事を覚えてもらうこと、そして相手を尊重することが大切です。

それには相手の名前を憶えてすぐ使うことがとても有効です。
というのも、名前を憶えてすぐに使うことで、相手の記憶に残りやすくなると言われています。
これは、何故でしょうか?

自分の名前を呼ばれると前頭前野内側(ぜんとうぜんやないそく)が活性化します(他人の名前ではしません)。

をここは「客観的自己像」に関連する場所とも言われ、人の目に自分はどう映っているのかという事を意識した時に活動する場所とされています。

そのためか、相手に見つめられた時にも活動します。

つまり、名前を呼ばれるたびに、名前を呼んだ相手の事を意識するということが考えられます。

また、相手がすぐに自分の名前を憶えて呼んでくれるとなると、自分を大切に扱ってくれていると感じやすく、自己承認欲求も満たされるのではないのでしょうか?
『千と千尋の神隠し』では、名前はその人のアイデンティティそのものとして描かれています。

相手を尊重するといっても、やたら敬語を使ったり、気を遣ったりするのでは、親密な関係性は築けません。
さりげなく相手を尊重する方法として、相手の名前を呼ぶというのは案外いいのかもしれません。

だからといって相手の名前を連呼するのは、逆効果です。
会話の中にさりげなく取り入れて、いきなり相手のパーソナルスペースを侵さないように気をつけましょう。

相手のまねして好感度アップーミラーリングー

「朱に交われば赤くなる」という諺もありますが、相手に親しみを感じたときに相手の動作を真似しやすくなるとされています。
そして、おもしろいことにその逆、つまり、相手の動作をまねると好感をもたれやすいということも証明されています。
もちろん、わざとらしいと逆効果になりかねませんが。
相手に気づかれない程度にさりげなくということが大切です。

これはNLP(神経言語プログラミング)で相手との信頼関係を築くミラーリングという手法としてもしられています。

さらに、まねをされた相手は、単に真似をした相手に好感を抱くだけではなく、その周囲の人に対して優しくなるという報告もあります。

被験者は、事務所に入り、机の前に座ります。
対面する形で実験者が座っています。
実験者は、被験者に雑誌広告について言葉で説明して評価するよう伝えます。
実験者は、その際、5分ほどさりげなく、相手の動作をまねます。
実験者は、被験者にあわせて、前かがみになったり、後ろに持たれたり、腕を組んだりします。
被験者は、真似されたことには全く気付いていません。

そして、ここからが実験本番です。
実験者は、被験者に「次の実験では別の実験車に従って別の実験をしてもらいます」と告げ、退室します。
そして、別の実験者が入ってくるわけですが、この人が机に向かって歩いてくるときに「ふと」持っていたペンをぱらぱらと落してしまいます。
で、ペンを拾うのを手伝ってくれるかどうかをみたのです。
すると、先ほど別の実験者に真似された人の方が、2倍もペンを拾うのを手伝ってくれたそうです。

つまりは、まねをした本人だけでなく、他の人に対しても前向きな行動をとりやすくなるということです。
まねをされた被験者の方が80パーセントの確率で、お金を慈善事業に寄付しようとしたという報告もあるそうです。

なぜ、こういうことが起るのでしょうか?
この答えの鍵は、どういう時に人は無意識に相手のまねをしやすいのか?という所にあると推察されています。

人は真心のこもったやり取りをしようとしている時により相手のまねをしやすいという事がわかっています。

やり取りの前にサブリミナルで「仲間」「いっしょ」といった言葉を提示した場合、より相手のまねをするようになったという報告もあります。
相手と自分との間に社会文化的共通点が多いと感じるとその相手をよりまねするというデータもあるそうです。

つまりは、もともと相手をまねるという行動は、より親しみを感じた時に出やすいという事です。
そのため、さりげなくまねられると相手が自分に対して親しみを感じ、大切にされていると感じやすいのかもしれません。

まとめ

初めの印象をよくする意味とその方法についてまとめてみました。
人の悩みのほとんどは人間関係であるともいわれています。
初めての人と会う機会があるときには試してみてもいいかもしれません。

参考)
脳の取扱説明書 P136, 247
http://www.all-about-psychology.com/solomon-asch.html