人とより良い関係性をはぐくむためには、その人との間に信頼関係を築いていくことが重要です。

スティーブン・R・コヴィ-は、『7つの習慣』の中で、
「人間関係づくりに最も大切な要素は、私たちが何を言うか、何をするかということではなく、私たちがどういう人間であるのかということである」
と言っています。

言動よりも人間性(内面)が大切ということです。
もちろん、その人の内面が言動に現れるということはありますが、
表面(言動)だけ取り繕っても、長い付き合いの中でメッキは剥がれていくものです。

結局は、人としての基礎体力である「信頼の積み重ね」が最も大切になってきます。

交渉術や会話術というテクニックだけに捉われていたのでは、
表面的な人間関係はできても、よりよい人間関係を築き上げるのは難しいというわけです。

双方のメリットを考えるのがもっともメリットが大きい

「囚人のジレンマ」という言葉を聞いたことがありますか
ゲーム理論や経済学での重要な概念の1つとも言われています。

実際にどういうものかというと…
いっしょに犯罪を犯したと思われる囚人A, Bを自白させるため、警官は囚人2人に以下の条件を伝えます
当然、2人は別の個室に入れられていて、お互いに連絡を取ることはできません。
・2人とも黙秘した場合…2人とも懲役2年
・2人のうち1人だけが自白した場合…自白した人はその場で釈放、自白しなかった方が懲役10年
・2人とも自白した場合・・・2人とも懲役5年

相手の事をも思いやるのであれば、相手を信頼し、黙秘して2年の刑を受ける方が得です。
しかし、孤立して相手がどういう行動をとるか分からない状況で自分の利益だけを追求したらどうでしょう?
相手が黙秘したとして、自分が自白すれば釈放です。(黙秘した場合は懲役2年)
相手が自白したとして、自分も自白すれば懲役5年ですが、黙秘すれば懲役10年です。

つまり、自分の利益だけを追求した場合においては、自白したほうが得になる…ということです。
このゲームは1回だけではなく、同じ相手と何回も行います。
その場合に、もっとも得をする戦略というのがあります。
その名も「しっぺ返し戦略」...そのままのネーミングですね。

それで、具体的にどうするかというと…
まずは、相手を信頼して、協同する行動をとる。相手が協同する限りはこちらもその行動をとる。
相手が裏切った場合、こちらも即座に協同をやめる。
相手が協同に戻った場合、こちらもすぐに協同に戻す。

これは、おそらくこのゲームだけの問題ではないでしょう。
実際の人との付き合いの中でもこういうことはいろいろあります。
自分の利益だけを追求するのではなく、相手を信頼し、お互いにとっての利益になるような行動をするということが、長い目で見ると最もメリットが大きいということです。

このゲームのように相手が自分の利益だけしか考えず、裏切るような行動をとった場合にまで相手の利益を優先させるというのは考え物です。
これは、自分を犠牲にすることでもあり、自分を大切に扱っていないことになります。

しかし、相手が心を入れ替えた場合には、いつまでも意地を張って相手を許さず反発するような行動をとるよりは、寛大になって協同していく方が自分にとってもメリットは大きいということでしょう。

信頼関係を積み重ねるために重要な6つのこと

「信頼の積み重ね」のために重要なこととは何でしょう?
コヴィーは以下の6つを挙げています。
① 相手の価値観・重視していることを理解する
② 小さな心遣いや礼儀を大切にする
③ 約束を守る
④ お互いが期待することを明確にする
⑤ 誠実さを示す
⑥ 過ちは誠意を持って謝る

信頼関係がお互いにメリットをもたらすメカニズム

私たちが、相手の価値観や重視していることを理解しようと思うと、相手に対して興味を持つ必要があります。
そして、相手に対して興味を持って接したとき、相手も私たちに好意を抱いてくれる可能性が高まります。

というのも、人は興味のある対象を見つめる時には、交感神経が活発になって瞳孔がわずかに開きます。この瞳孔が少し開いた状態というのは、相手にとっても魅力的に映るのです。

更には、思いやりを持って相手に接した場合、当然、相手にそれは伝わります。
そして、相手は「自分を大切に扱ってもらえた」と感じるため、自己承認欲求は満たされます。
脳の報酬系が刺激されて、快感が得られるのです。
まぁ、端的に言うと、一緒にいて心地よく、楽しく感じるということです。

そして、相手が心地よく楽しんでいてくれるという状況は、当然自分にも戻ってきます。
私たちの脳には、ミラーニューロンというものがあって、相手が楽しんでいると自分も楽しくなるという性質があるからです。
相手を思いやる行為が、結果的に自分を心地よくしてくれるのです。