私たちは、お互いに知らず知らずのうちに影響を与え合っています。
『言葉ではなく、行動で示せ』ということがよくいわれるように、口で相手に諭すよりも自分の在り方を見せること、つまり日頃の行動で示すほうが相手に与える影響は大きいようです。

周りの行動が自分の行動を左右する

ニューヨーク州立大学のdeTurck MA博士が行った実験があります。
126人の大学生に、新製品のオーブンクリーナーを試しに使わせてから、評価させました。
ただし、一緒に参加している学生の一部はサクラで、その学生たちが本物の被験者よりも先に試します。

そして、サクラの学生がオーブンを触る前に安全手袋をつけた場合とつけなかった場合に、本当の被験者の学生がどういう行動をとるかを比べます。
危険!!というメッセージを張りだしたり、伝えたりするのが有効かどうか、という事も調べられました。

それで、結果はというと…
サクラが参加者の前で安全手袋をはめた場合、その後の参加者の97.5%が安全手袋をはめたのに対し、サクラが安全手袋をつけなかった場合は、その後の参加者の36.4%しか安全手袋をつけなかったそうです。
これは、サクラが親しい人かどうかとうことには関係ありませんでした。
残念ながら、警告のメッセージや伝言には効果がなかったようです。

なぜ相手の行動をまねるのかーミラーニューロンの果たす役割ー

なぜ周りの行動をまねてしまうのでしょうか?
それは私たちの脳にあるミラーニューロンの機能から考えると説明できるかもしれません。
このニューロンがあるため、私たちはもともと人の行動を模倣しやすい性質があります。
そして、こういう性質があるおかげで、小さい時から親など大人のまねをし、いろいろなことを学習できるのです。

つまり、他人を説得したいと思った時、その人に何を言うかではなく、自分がその人といる時にどういう行動をとっているかということのほうが重要であるということです。

周りの意見に左右されてしまう~ハーティング効果~

私たちには、「集団と同じことをしていれば安心感を得られる」という性質があります。
そのため、周りの人と同じ行動をとろうとします。それは、明らかに間違っていると気づいていても同じだそうです。

ハーディング効果といつ名前がついています。
それは、集団から外れた行動をとりたくないという傾向もあり、そのため特定の集団に属する人の風貌や思考が似てくるというものです。
ことわざにもありますが、「朱に染まれば赤くなる」ということがおこるのです。

どのくらい周囲の影響を受けるのかーアッシュの実験ー

社会学者のソロモン・アッシュが行った面白い実験(アッシュの実験)があります。

テーブルの周りに7~9人座ってもらい、視覚的判断の実験をすることを伝えます。
そして、18対のカードを見せます。一方に描かれた3本の線のうち、もう一方のカードの線と同じ長さのものはどれかを1人ずつ順番に大きな声で回答してもらいます。

この問題は、1人でこの問題を行ってもらった場合には、ほとんど誰も間違えることはないくらい簡単なものにしてあります。

実は、1人を除いて残りの参加者はサクラです。
本当の被験者は、常に最後にこたえる位置に座り、他の人の回答を聞いた後で判断するようになっています。
そして、サクラにはあらかじめ18問中12問で、同じ誤った答えを言うように指示しています。

すると、本当の被験者の約37%が他の参加者と同じ回答をしたそうです。
3分の1以上もの人が、他の参加者に同調して、明らかに間違いだとわかる回答をしたということです。

明らかに間違いだとわかる場合でさえ、この結果…。
ちょっと迷うような問題だったら、もっと周りにあわせてしまうことでしょう。

まとめ

私たちは、無意識のうちにお互いに影響を与え合っています。
周りの人たちに変わってほしいと思ったら、自分が変わることが早いのかもしれません。

逆に、変わりたいけれどなかなか変われないと思ったら、新しい環境に身を置くというのも一つの方法なのでしょう。
自然と自分への変化が訪れるかもしれません。

参考)
Asch, S.E. (1940) Studies in the principles of judgements and attitudes: Ⅱ. Determination of judgements by group and ego standards. Journal of Social Psychology, 12, 433-465
http://switch-dec.com/peer-pressure-1321.html
アッシュの実験カードはこちら
http://psychological-jp.com/analysis2/p2.html