お腹の中の赤ちゃんに話しかけコミュニケーションをとることで、赤ちゃんに良い影響があるということがいわれています。
それでは、実際に赤ちゃんはお母さんのおなかの中で何を感じているのでしょう。
お腹の赤ちゃんが持つ感覚についてまとめてみました。
胎児は五感を区別できないー共感覚ー
お腹の中にいる赤ちゃんは、妊娠の早い時期から外からの刺激を受け取り、それらの刺激が神経系を作るのに重要であるということが分かっています。
とはいえ、子宮の中で全身が保護され、暗闇の閉ざされた環境にいる中でどのように外からの刺激を受け取っているのでしょうか?
もしかすると、お腹の中にいる赤ちゃんが多くの感覚的刺激をまだ区別できないことと関係があるかもしれません。
つまり、その時期の赤ちゃんは、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚といった五感の区
このような状態は「共感覚」と呼ばれ、多くの人は成長とともに失われてしまいます。
そのため、音を聞いた時に色を感じたり、何かに触れた時にある匂いを感じたりします。
異なる感覚の様式が互いにまじりあっているのです。
このような共感覚は3歳ころまでは持っているとされています。
胎内にいる赤ちゃんが共感覚を持っていると考えると、肌で感じた感覚だけでも想像以上に多くのことを感じ取っている可能性があるのです。
最初に発達する感覚、触覚
五感の中で最初に発達するのが『触覚』だとされています。
赤ちゃんは、お母さんのお腹の中で手や顔の皮膚にある受容体が活動するようになります。
その受容体から『触覚』刺激が脳に伝わることによって、触覚が成熟していきます。
だいたい妊娠7週目から成熟が始まり、妊娠6ヶ月半ごろには完成するのだそうです。
お腹にいる時からお母さんの胎内の様子をいろいろと感じているのです。
もしかすると、水に様々なリラックス効果があるのも胎内での体験が何か影響しているのかもしれません。
触覚のなかでも親指と口の感覚は、とても重要です。
というのも、生まれてからの命の糧となるおっぱいを吸うためには親指と口の感覚、特に口の感覚は欠かせないものになってきます。
そのためか、胎内にいる時から「指しゃぶり」をする子が多いそうです。
そのときから親指と口の感覚を鍛えていたのでしょうか。
親指と口の感覚は、その後、成長してからも道具を使ったり、コミュニケーションをとったりするときにも重要な部位であり、他の寝台部位に比べると脳に占める割合が大きくなっています。
胎内にいるときから両親の声を聞いている
子どもたちは、既にお腹にいる時から両親の声を聴いて育っているとされています。
実際、妊娠2ヶ月にもなると耳の形成が始まります。
そして、音を聞くことができるようになるのが、妊娠4か月ころからだそうです。
すでに生後6か月の乳児で母国語と外国語を聞き分けられることがわかっています。
6か月の乳児に、母国語が流れるスピーカーと外国語が流れるスピーカーをきかせると、母国語が流れるスピーカーの方に顔を向けるそうです。
生後2~5日の新生児ですら、すでに母国語と外国語を聞いた時には、言語野のある左脳の反応が違っているという報告もあるくらいです。
生後すぐに母国語と外国語によって脳の反応が違っていたということを考えると、胎内にいる間からお母さんの声を聞いていたというのは想像に難くないでしょう。
さらにおもしろいことに、生後4か月の時点ですでに、顔の表情や口元の動きだけで、音声がなかったとしても母国語と外国語を区別しているのではないかという報告もあります。
というのも、母国語を話す顔の方をより長く眺めることがわかっているからです。
それだけ生まれてからず~っと人の顔をしっかりとみてきたということなのかもしれません。
お腹の中で対象を見る準備をしている
お腹の中で赤ちゃんは物を見る準備をしているのかもしれません。
というのも、妊娠28週頃になると目を動かすようになるのです。
最初は自律的な動きだったのが、更に何週間かすると複雑な動きをするようになってきます。
その回数と範囲の広さは、脳の発達と密接に関連しているといわれています。
その結果、生まれた後に対象物を追いかけて、手を伸ばすということができるようになるのです。
まとめ
胎児の持つ感覚についてまとめてみました。
私たちは、想像以上に生まれる前から多くの体験をしているのかもしれません。
そう考えると胎内環境を整えること、つまりなによりも母親がストレスなく過ごすことが重要なのでしょう。
参考)
胎児の脳 老人の脳 知能の発達から老化まで アルベルト・オリヴェリオ、アンナ・オリヴェリオ・フェッラーリス 著 川本英明 訳 創元社 2008