スポーツや楽器の演奏など、いろいろな技術を習得するときによく「身体で覚える」ということがいわれます。
なんとなく感覚的にはわかるこの言葉、具体的にはどういうことなのでしょうか、そのメカニズムについてまとめてみました。

身体で覚えるとは

繰り返し練習されたことは、意識することなく使えるようになります。
これが、身体で覚えた(体得した)状態です。

この状態になるといちいち頭で考える必要がありません。
そのため、そのエネルギーを他に回すことができます。
つまり、脳としては省エネな状態なわけです。

しかも、いったん身体で覚えてさえしまえば、忘れにくいという特徴もあります。
水泳や自転車乗り、車の運転、楽器の演奏など最初は一つ一つの動作を考えながら行っていたことでも、いったん慣れてしまえば次にどうするのか考えずにスムーズに行うことができ、何年たっても忘れません。

これは、小脳の働きによるものとされています。

身体は0.1秒の違いも分かっている

慣れてくると身体というのは、0.1秒の違いさえも認識できるようになるようです。

2014年2月、アメリカ合衆国のシカゴで、「黄色信号の点灯時間を0.1秒短くしたらどうなるのか?」ということが試されました。
赤信号になったらナンバープレートが自動で撮影される違反摘発システムを採用した際、通常3秒だった黄色信号の点灯を、こっそり2.9秒に変更しました。
0.1秒くらい大したことないじゃないと思うかもしれませんが、それはどうも違うようです。

たった0.1秒短くしたために、あっという間に7万7千枚の違反切符がきられ、罰金の総額はなんと8億円相当に上ってしまいました。結局は、苦情が多く寄せられたため、もとの3秒に戻したということですが、予想をはるかに上回る結果に市長も困惑したそうです。

0.1秒の違いを意識的に認識するっていうのはかなり大変です。
私も以前に10秒フラットでストップウォッチを止めたら景品がもらえるというゲームにチャレンジしたことがありますが、最初のチャレンジでは、0.1秒どころか秒単位で違いました。

ところが、身体で覚えたものというのは、このわずか0.1秒の違いでさえも敏感に感じ取っているのです。
つまり、身体が覚えていたということです。

身体で覚えたことは、なぜ忘れにくいのか

「身体で覚えたこと」が、忘れにくく、意識することなく使うことができるのには、理由があります。
これは、一連の動作を繰り返すことや試行錯誤することによって、一つ一つを別々のものとして覚えているわけではなく、一つの塊のモデルとして保存しているからではないかと考えられています。

先ほどの例でいうと、
①黄色信号に変わった瞬間を見る
②停まるかそのままの速度で進むか、スピードを上げるかを判断する
③判断に従った行動をとる
という一連の動作を一つずつ別のものとしてとらえているわけではなく、①~③を一つの塊のモデルとして、身体が覚えているわけです。

そのため、どのタイミングで黄色信号に変わる瞬間を見たかによって、無意識に②、③の行動をとってしまうということです。
たった0.1秒の違いを身体はわかっているんですね。
違いが分かるやつなんです。

身体で覚えるコツ

では、どうしたら身体で覚えやすいのでしょう。
それには、以下のようなコツがあるようです。

  1. 繰り返し練習する
  2. 練習の目的を考える
  3. たまには休んでみる
  4. 成功したら続けてみる
  5. イメージトレーニング
  6. 応用してみる
  7. 見直しをする

まとめ

身体で覚えることについてまとめてみました。
それは特殊な技能だけではなく、食べることや歩くことなども子どものときに身体で覚えて身につけたものです。

今はできないことであっても、積み重ねることによって気軽にできる時が来るかもしれません。

参考:
脳の取扱説明書 p38
小脳の内部モデル
http://www.yochi-taka.com/~muscle/cerebellum.html